とうとう大田姫野クリニックでも送迎を開始することとなりました。
私は送迎サービスは本来各自治体が考えて然るべきものと解釈していますので、一開業医に送迎までゆだねる行政には問題ありだと思っています。そして厳しい言い方をすればそれは本来家族の果たすべき役割です。
私が送迎を嫌うにはいくつか理由があります。
ひとつはそれが当たり前になり感謝の心が失われることです。出雲の送迎では車中で喧嘩が絶えず、やれ遅刻しただとか、席順が違うだとか、我を先にと降りようとして押されて転んだとか、一番に帰りの送迎車に乗り込みたいから穿刺を早くしろだとか、低レベルのトラブルが多発しており人間性を疑います。
どうしてお互い様という気持ちがないのでしょうか。
血圧が下がって送迎車に乗るのが遅れた患者さんが肩身の狭い思いをするほどとげとげしい空気があるのは異様です。
もうひとつの理由は患者さんが歩く機会を失わせることにつながること。そしてもうひとつは家族のかかわりを希薄にしてしまうことです。至れり尽くせりもいいですが(本当はいいとは思っていませんが)自分のこと、家族のことなんだから出来ることは可能な限り自分達ですべきでしょう。送迎をやめることで患者の寝たきり率が低下したと学会発表された医師もあるくらいですので、送迎の功罪は色々ありそうです。自分の身体に無関心、自分の家族に無関心は恐ろしいことです。
とはいえ大田の場合交通機関の未発達はどうしようもなく、高齢者の一人暮らしも多いことから、患者さんへの利益還元のためまずは高齢独居の患者さんの多い旧市街より遠い地域より送迎を開始しました。
そして今後は三瓶山やさらにその奥の山間部に住んでおられる方の力になれればと考えています。
ただ医療情勢により送迎サービスがいつまで続けられるかは分かりません。治療内容や設備投資を削ってまで送迎を続けるなんていう客寄せサービスはまっぴら御免ですから。
早く行政サービスの一環で透析患者への通院補助が整うこと、そして困ったときはお互い様、感謝の心をどうにか忘れずに皆さんで気持ちよく通院していただくことを強く願います。
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